⚫︎ 資金調達の主役(約束手形からファクタリングに)

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 企業の資金決済の手段は長らく約束手形によって行われてきた。現在の約束手形交換数は約2,709万枚に取引額は約89兆円(令和4年)であるが、約束手形交換数のピークは約4.3億枚(昭和54年)で取引額は4,797兆円(平成2年)である。

その約束手形取引も令和8年には廃止されることになっているが、その受け皿として期待されたのが全銀協が運営する『でんさいネット』である。でんさいネットとはオンライン化された約束手形取引システムであるが、サービスを開始した平成25年からちょうど節目の10年が経過するでんさいネット取扱数は約592万件で取引額は約35.5兆円(令和4年)である。

一方でファクタリング取引は平成10年に債権譲渡特例法が施行、平成17年には債権譲渡登記制度が改正、そして令和2年年には債権譲渡特約の無効が定められた。また令和2年以前のファクタリング取引では確定債権のみが対象であったが、これ以降は未来の債権を取引対象にすることができることで、従来の金融取引における与信枠や約束手形の融通機能と同じ機能が備わったと見ることができる。

今のところファクタリングの取引額は約7.5兆円(令和3年)であり、でんさいネットの取扱高の約21%程度であるが、約束手形の取引額を縮小させた主な要因に日銀のマイナス金利政策が大きく関わっていることもあり、でんさいネットを主導する各銀行にとっては、利息収益が期待できない中では、取引先企業に直接融資する方が収益性に貢献することもあり、融資先企業のキープを行うことが考えられ積極的には、でんさいネットの運用に踏み込んでこないと考えられる。

一方でオンライン型ファクタリング取引では通信系やFREENANCEのようなIT系企業の収益化が容易であることから今後、デジタル給与の流れを受け銀行以上にビッグデータを収集分析できる通信系やIT系企業の参入によって、フリーランスやスモールビジネス向けファクタリング取引のリスクヘッジ機能が進化し、新しい資金決済市場としてオンライン型ファクタリング取引がアメリカのように伸びてくると考える。

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