― オシラセを核にした“非銀行的信用プラットフォーム”の構築 ―
これまでの議論では、個人と契約を結び“取引の履歴”を積み重ねていくことで、社会的信用を回復させる仕組みとしてオシラセの活用を述べてきました。
今回は、その信用の回復を「地域ぐるみ」で支えるための連携体制にフォーカスします。
1. 「非銀行的信用プラットフォーム」の意味
オシラセは、あえて通貨発行も貸付も行いません。
このことが「信用がない人でも参加できる空間」として機能する理由です。
言い換えれば、これは**“金融サービスではない”ことが前提の信用形成装置**であり、取引と履行履歴という“非金融的信用”を蓄積する土台となります。
この非金融的信用は、やがて行政支援・地域通貨・正式雇用・福祉サービスなどへの橋渡しとなり、地域全体の信用の循環網(=エコシステム)を支える中核となるのです。
2. 福祉法人・社会福祉協議会による支援実務の可視化
福祉現場では、就労支援・日常生活支援・金銭管理支援など、非常に多くの「非公式な契約的関係」が存在しています。
しかし、これらの支援行為が「履歴」として残ることは少なく、支援者も支援対象者も、社会的信用を得る機会を逸しています。
そこで:
- オシラセで簡易的な労働・委託契約を作成
- 実行のたびに**“完了”を記録し、評価”を送信**
- 契約履行の積み重ねにより、支援対象者が「信用の足跡」を残せる
という運用が可能になります。
この仕組みは、福祉支援を**「記録されない善意」から「社会的価値の可視化」**へと進化させます。
3. 地域金融機関との役割分担
信用金庫・地銀は、過去の実績が乏しい顧客に対して融資を行うことは難しくなっています。
一方で「履行履歴」が積み上がった人に対してなら、次のステップ(口座開設・マイクロローンなど)への対応もしやすくなります。
つまり:
- オシラセで履歴を可視化(信用履歴の“前段階”)
- 信用金庫等が信用の“出口”として役割を担う
このような役割分担によって、従来の金融機関ではカバーできなかった“プレ信用層”との接点が生まれます。
4. NPO・就労支援団体の実行主体としての参画
地域の中で、信用再生の「現場」を担うのは、実際にはNPOや就労支援団体であることが多いです。
- 路上生活者支援の契約履歴
- フードバンクでのボランティア記録
- 地域作業所での勤務記録
- 農業ヘルパーの単発契約
これらすべてを、個人ごとの「履歴付き契約」として残すことで、やがては:
- 公共事業への参加条件
- マイクロクレジットの与信材料
- 就職面接での信頼材料
になる可能性が生まれます。
5. 信用を“共有”するエコシステムへ
重要なのは、履歴や信用を“私物化せず、共有資産にする”設計です。
- 履歴は本人のもの
- 契約は相互に記録され、関係性の中で蓄積される
- 記録された信頼は、次の支援機関でも引き継げる
このような仕組みがあってこそ、「この人は社会的責任を果たしてきた」という“信用の文化”が地域内で根付きます。
結論:信用再生は、地域による“共同プロジェクト”である
オシラセが持つ「契約・通知・履行・評価」という軽量かつ強力な記録機能は、単独のサービスではなく、地域ぐるみの信用再生ネットワークのインフラとしてこそ真価を発揮します。
銀行が“出口”にいるなら、福祉法人とNPOが“入口”を開き、自治体が“全体設計”を担う。
それを支えるのが、オシラセという日常的・カジュアルな信用履歴基盤なのです。