1. なぜ自治体は「民間の保証」が必要なのか
自治体が動くには、制度や法令の根拠だけでなく、“社会的に正当化された前例”が求められます。
それはつまり、金融機関との提携や大手プラットフォームとの連携のような、「誰が見ても安全そうな外堀」が必要ということです。
とくに、
- 自治体は独自に“実験”できない
- 住民の税金を使う以上、制度外の構造に踏み出せない
- 実績のある企業(=失敗しないブランド)との提携でしか動けない
といった行政保守性の壁があるため、どんなに正しい設計でも、
「銀行と連携してからでないと導入できない」
という現実が立ちはだかります。
2. 広告の世界も“信用スコア社会”
オシラセのような社会福祉的な支援構造は、広告の審査ポリシーの中でも排除されやすい現実があります。
特にGoogle広告やSNS広告では、次のような仕組みが働いています:
- 収益化審査は**「金融ライセンス」と「信用保証」**を重視
- 「返済を伴う支援」や「福祉と金融の中間領域」はグレーゾーン扱い
- ターゲティング可能な層はクレジットヒストリーを持つ人に限定される傾向
つまり、オシラセが対象とする**信用の外にいる人々(サブプライム層)**は、
広告の世界でも「市場の外」に位置づけられ、認知のチャンスさえ持てないという状況です。
これは、信用経済にアクセスできない人々が、金融・広告・制度のすべてから静かに除外されている構図と重なります。
3. オシラセが照らす“経済の影”
オシラセは、「貸す」「返す」「儲ける」という視点から外れた、“支援の記録”を積み上げる構造です。
これは、今までの社会制度や金融スキームが手を伸ばさなかった**“信用の谷間”**に立ち入る行為でもあります。
だからこそ:
- 公的機関からは「制度外」として警戒され
- 広告業界からは「不健全」として避けられ
- 民間金融からは「リスク」として除外される
しかし、この“排除の三重構造”こそが、今の社会でサブプライム層が孤立していく根本原因ではないでしょうか。
4. 結論:「制度の後追い」ではなく、「信用の前提」を書き換える
第26回で述べたように、オシラセは“デフォルトを想定した設計”を特徴とする社会的インフラです。
そして第27回では、次のステージに向けた「制度化と認知の課題」が明らかになりました。
- 自治体が導入するには、“民間信用の保証”が必要
- 広告を出すには、“マーケティング信用の審査”が通らなければならない
- しかし、本来の目的は、“信用がない人を支援すること”である
この矛盾を乗り越えるためには、社会全体の“信用の基準”をリセットする必要があります。
「支援が必要な人のもとに届く仕組み」は、“信用のある人”の側ではなく、“信用を持たない人”の立場から設計されなければならない。
その視点の逆転が、次のオシラセのステージ=「制度化と共助の再設計」へとつながっていきます。