1. 「制度があるのに届かない」という矛盾
日本は、世界でも有数の“制度の網目が細かい国”です。
生活保護、就労支援、貸付制度、母子加算、障害者福祉……書類上はあらゆる支援が整備されています。
しかし実際には:
- 制度の対象者であるのに利用していない人が多すぎる
- **窓口にすら来られない“制度未到達層”**が膨大に存在している
- 本人が「自分が対象かどうか」すら分からない状態も多い
これは、制度が“正確に存在している”ことと、“必要な人に届いている”ことの決定的な乖離を意味します。
制度の中にいないから助けられない、ではなく、「中にいないこと自体が、助けが必要な状態」なのです。
2. 「信頼」が入口になる支援の構造
オシラセが向き合っているのは、「支援制度が届かない」という問題ではありません。
もっと根本的に、**“そもそも制度に入れない人”**をどう受け止めるか、という問いです。
だからこそ、オシラセは:
- 住所や就労状況にかかわらず登録できる
- 支援の返済義務が信用の構築材料になる
- 利用実績が**「制度とつながる履歴書」**になる
という形で、信頼を先に預ける設計になっています。
これは「審査に通った人を支援する」のではなく、
支援を通じて審査が成立する新しい構造です。
3. 共助のための“記録”というインフラ
オシラセが蓄積しているのは、「貸し借り」ではなく**“記録”**です。
利用者の活動記録、支援履歴、返済の有無、回復までのプロセス。
この記録が:
- 行政や福祉の制度につなぐ導線になる
- 他の支援事業者との連携材料になる
- 本人の**“制度に届くための足場”**になる
つまり、オシラセは支援を提供する道具であると同時に、制度と本人をつなぐ共助の中継点として機能しうるのです。
「いま制度から漏れている人が、次に制度とつながるための場所」
——それが、オシラセの立ち位置です。
4. 再設計の起点は、「誰が排除されてきたか」を見直すこと
これまでの制度設計は、「正確に管理できる人」を対象にしてきました。
書類が提出できる人。住所がある人。納税記録が残っている人。
しかし今は、
- 住居を失ってスマホでしか生活できない人
- 書類に名前を載せることすらリスクな人
- 実家や病歴にアクセスを制限している人
が、「制度に入りたくても入れない」という形で排除される時代です。
再設計とは、「支援対象の正しさ」を問い直すことから始まります。
5. 結論:「制度の前にある共助インフラ」としてのオシラセ
オシラセが見ているのは、“制度に入った人”ではなく、“制度に入る前の人たち”です。
だからこそ、信用も、返済も、審査も、制度と逆順に設計されています。
この仕組みが全国に広がれば:
- 制度未到達層に記録という“関係性”を生み出し
- 福祉制度が届く“地ならし”を進めることができ
- 将来的には“制度の入口”そのものの姿が変わる
オシラセが挑むのは、制度を補完するテクノロジーではなく、
**制度の前段に共助の文化を築くという“構造の再設計”**なのです。
“制度の網目から落ちた人”を責めるのではなく、“制度の前に手を差し出す構造”を、社会の中に用意すること。
それが、次の福祉インフラのはじまりだと、私たちは考えています。